大きな木のテーブル。
みんな僕のことをいい匂いがするという。
なでたり、たたいたりして気持ちいいねって言ってくれる。
この家では、僕は家族の中心にいる。
美味しいご飯をみんなで食べながら、サッカーの試合のこと、自慢ばなし、
悔しかったこと、、、、、この家族が大好きだった。
みんな仲良しだし、なによりいつも僕のそばにいてくれるから。
笑ったり悩んだり、僕はその全部を受けとめてきた。
隣の部屋のソファからは、いつも羨ましがられていた。
だって彼女のところへいくと、なぜかみんなすぐに寝てしまうから。
そんな時、きみがフカフカとしてあまりにも気持ちいいからだよって、僕はいつも彼女を慰めるんだ。
ある時、新しいキャビネットがやってきた。最新のデザインと色、彼はピカピカと輝いていた。
みんなはもう彼の話で持ちきりだった。
どうやらとびきりの有名人がデザインしたらしい。
やっぱり違うね~かっこいいね~
みんな口々に彼を褒め称える。
僕は哀しくなりさびしくなった。
あんなに一緒にテーブルを囲んで遊んだ子ども達も大人になり、家族みんなでご飯を食べることもだんだん少なくなってきていた。
僕はもういい匂いはしていなかった。
歳をとったせいか木肌は黒ずんでシミもある。
僕はもう誰の役にも立っていないのかな。
時々、こだわりやのお父さんが布巾で丁寧に拭いてくれることがある。
お母さんは気がつかない、裏の汚れもキレイに拭き取ってくれる。
気持ちがいい!お父さんのことは大好きだった。
でもまたひとりぼっちの時間が続く。
もう僕は僕は、、、、、、
そんなある時、珍しく訪問者がやってきた。
そのおじさんに会うのは初めてだ。
おじさんは僕を見つけるとうーんとうなずいた。
顔をのぞきこんでは目をパチパチさせた。そして今度は撫で回したり、
その太い腕をでーんとのせてきたりした。
いいねーこのテーブル!
いい味が出てるね~どれくらい使ってるの?
お父さんは、僕が初めてこの家に来た時のこと、なぜ僕を選んだか、
どんなところが好きかを話し始めた。
僕はあらためて好きなところを言われて照れた。
どうやらこの長い年月の間に、僕には深みというものができているらしい。
新人には決してない風合いがあるらしい。
そして、それはこれからもっともっと増してくるらしい。
嬉しかった。あの現代っ子のキャビネットにまだ勝てるのか?
いや、勝っているのか?
ソファが、ふっと笑いながら言う。
勝ち負けなんて、、、家族はみんな大切に想ってくれてるから大丈夫!!
こういうので絵本が作れたら、いいですねー。